ノリトレン

うつ病がきれいに治り、前よりも成長できた自分。うつ病体験談 P5

今回でうつ病体験談も最終話です。

最終話は、うつ病の回復途中での復職の様子や、完全に薬をなくすための減薬の様子等を書いています。

仕事に復帰し、働けることのすばらしさを実感する。

前回は、睡眠薬をだんだん減らした様子をのせました。

この時の処方内容は以下の通りです。眠剤や頓服がなくなり、抗うつ剤のみの、すっきりとした処方となりました。

薬の名前1日量薬の種類
ノリトレン75mg抗うつ薬

毎日よく眠れるし、気分も悪くありません。

家の中で、ちょっと掃除や洗濯をしたり、スーパーに買い物に出て簡単な調理をしたりして過ごし、前のように毎日ベッドから天井だけ見ている過ごし方からは一変しました。

病気になる前の活動量から言えば、まだまだ少ないですが、充電期間として、休み休みゆっくりとした時間の使い方をしていました。

職場復帰の調整をする

私の職場は、精神科病院や、そこに付属する施設等でしたので、職場には精神科医がたくさんいます。

そのため、休職中も月に1度、電話にて職場の精神科医(産業医)と、病状の報告や、復帰の時期等の相談をしていました。

経過が良いため、休職して2ヶ月半が経過した段階で、一度、復帰することに決まったのですが、復帰前1週間になると、やはりいろいろなことを考えてしまい、一時的に不調になってしまいました。

復帰のストレスでうつ病が悪くなっちゃったのかな?
こころ
うつ病自体の病状が悪化したというより、復帰のプレッシャーによって、心理的に一時的な不調になった程度の感じかな。
ただ、今無理をすると、本格的にぶりかえして、うつ病がよけい長引くと感じたので、復帰を1ヶ月のばしたんだ。

職場に復帰する

その後、一度、直接職場に行って、職場の精神科医や上司との面接を行い、無事に復職しました。
この時も、少し不安はありましたが、それは病的な不安というより、人として正常な気持ちの不安という面が強かったと思います。

結局、仕事は3ヶ月半ぐらい休んだことになります。

勤務時間と日数は今まで通りですが、はじめの内は、夜勤や宿直をせず日勤だけの勤務としました。

うつ病から復帰してきた人に対して、まわりの人は、どう接すればいいのかな?
こころ
あまり難しく考えなくていいんだよ。
私の職場では、みんな以前と何も変わらずに接してくれたので、それがとても心地よかったな。
変に気を使われると、逆に申し訳なくて、疲れてしまうからね。
うつ病の人には、よく「がんばってね」って言っちゃいけないとか聞くけど?
こころ
うーん…。
頑張った結果、うつ病になる人が多いから、さらに頑張らせないように、という配慮からの考えなんだけど、個人的には、別に言っちゃいけない言葉なんてないし(常識的な範囲で)、いつも通りでいいと思うよ。
こころ
それよりも大切なのは、自分自身がどのレベルまでできるかを、相手に伝えることだと思うな。
それってどういうこと?
こころ
例えば、うちでは復帰してすぐに「快気祝いの、飲み会を盛大にしよう!」と言ってくれたんだけど、まだ完全に治ったわけではないから、そこまで気分は上がらないことを伝え、しっかり断ったんだ。
仕事の上でも、ここまでの仕事はできるが、この先はまだ若干きついとか、伝えることが大切だね。
私は、復帰したからと言って、以前のようにバリバリ仕事をするのではなく、だいたい7割ぐらいでOKみたいな心持ちで仕事をしました。

復帰後2ヶ月で少し疲れが出る

順調に復帰したように見えましたが、当初から少し気が抜けたころ、少し意欲低下の症状が見え隠れしました。
そのため、次の受診で、ノリトレンを100mgに増量してみました。
薬の名前1日量薬の種類
ノリトレン100mg抗うつ薬

2週間後の受診

意欲低下は一時的なものであったようで、特に気になる症状は何もなくなりました。

また、ノリトレン100mgでは、やはり自分には少し強すぎる感覚があったので、もとの75mgに戻しました。

自分には、75mgが適量だとわかりました。

薬の名前1日量薬の種類
ノリトレン75mg抗うつ薬

この頃は、ほぼ「寛解」の状態でしたが、今後は、この量で「回復」をめざすことになり、通院の間隔も1ヶ月に1度となりました。

症状があまり出ずに安定しているけど、完全に治ったわけではないので、また悪くなる可能性がある状態を「寛解」といいます。
寛解が、半年前後続いた時は、「回復」といいます。服薬の有無は問いません。
完治とはちがうの?
こころ
「完治」とか「治癒」は、病気が完全に治ることをさし、精神科ではあまり使われない言葉だな。
ただ、寛解して、その後に、回復に至って、それから5年以上も再発しなければ、それはもう「完治」したといえると思うよ。

うつ病からの回復

私は、毎月1度の定期診察を受け、ノリトレン75mgという量を、このまま飲み続けることになりました。
良くなったのに、薬はやめられないの?
こころ
寛解したといっても、まだ完治したわけじゃないので、すぐに薬を止めると、再発する確率がすごく高いんだ。
寛解後も、ある程度は薬物療法を続けたほうが、再発を防ぎやすくなるんだよ。

ノリトレンの減薬を開始する

ノリトレンを飲むようになってから8か月が経過した頃、仕事はすでに、休職前の勤務条件での業務に戻り、プライベートでは、挙式をあげるなど、うつ病になる前のふつうの生活に戻っていました。
もう「回復」したといっても良い状態です。その時の処方内容は、以下の通りです。
薬の名前1日量薬の種類
ノリトレン75mg抗うつ薬
医師からは、ノリトレンの減薬をはじめる提案をされました。
ただ、この頃はちょうど、うつ病が悪化しやすい冬の時期であることや、年末年始はいろいろと忙しかったり、実家に帰省することで家族に対しての心配事などでの負荷がかかる恐れがあることなどから、減薬はもう少し先延ばしすることにしました。
自分の家は、あまり日当たりが良くないため、起床後は朝ごはんを食べる間だけ、専用の器具を使って、毎日、光を浴びるようにしました。
強い光で起床が促され、リズムが整い、うつ病にも良いとされています。

平成23年2月

年が明け、万全の状態にて、いよいよノリトレンの減薬を開始します。

慎重に減薬したかったので、75mgを67.5mgに減らしました。

3週間後の再診

離脱症状やうつ病の症状は特に出なかったので、このまま減量を続けます。

今後は、1ヶ月ごとに10mgずつ減らすことにしました。

長らく使用していた薬を急にやめることで起きるけっこう激しめの症状。不安、焦燥、不眠、動悸、発汗、けいれんなどが出ます。特にSSRIという抗うつ剤などでは、頭の中がシャンシャン鳴ってビリっと電気が走るような感覚「シャンビリ」が出たりします。
薬に限らず、タバコやアルコール、カフェインなどでも離脱症状があります。

うつ病治療の終了

抗うつ剤の減量は、もう少し早いペースで行うことも可能ですが、私の場合は、より慎重に月10mgずつ行い、結果的には、平成23年7月の診察で薬は完全になくなり、長かった定期診察もこれが最後となりました。

減量中は、特別大きな波は無く、順調に減薬ができました。ノリトレンの減量を開始してから5か月かかりました。

うつ病の完治!

最後の受診から、もう10年以上たちました。

はじめはうつ病だと思っても、その後の経過で「そううつ病」だった、ということもあるため、自分のテンションについては、ある程度注意を払っていましたが、そう状態になることはありませんでした。

また、うつ病の再発もありません。

うつ病は、完治したといえます。

長かったうつ病治療ですが、うつ病はすっきり治るのです。

うつ病が完治して良かったね!
ところで、お姉ちゃんとかはどうなったの?
こころ
姉の病状は安定し、その後に再婚もして元気にやってるよ。
兄のうつも比較的短期間で良くなったんだ。
そうなんだ!
みんな良くなって良かったね。
こころ
そうだね。
人生はいろんなことがあるけど、たとえ今が悪くても、それは今という限られた時にそうであって、未来はどうなるかわからない。同じように悪いままかもしれないけど、良くなるかもしれない。
それは誰にもわからない。

まとめ

私はうつ病になって、とてもつらい思いをしましたが、今となってはそれもいい経験だったと思います。
仕事柄、精神疾患のいろいろな症状を体験できたこともそうですが、何より人として一回り成長できた気がします。
治療が終わり、5年ぐらいたった頃、私は退職して、法人を立ち上げ、昔からの夢であった自分の施設を開設しました。
一生治らないと悲観的になっていた人間が、今では理事長です。人生どうなるか本当にわかりません。
ただ、うつ病は、1度かかると治った後も、その再発率は50%(2度かかると70%以上)と言われています。再発を防止するために必要な事を、毎日の生活の中で行って行きたいと思っています。

主な経過

出来事
平成21年9月上旬吐き気の症状がでて、内科を受診
平成21年9月中旬精神症状も現れ、心療内科を受診
平成21年9月下旬この日から合計4種類の抗うつ剤を試すが、改善しない
平成21年12月上旬休職を開始
平成22年2月上旬5種類目の抗うつ剤「ノリトレン」で、改善
平成22年2月中旬眠剤の減薬を開始
平成22年3月中旬眠剤の処方がなくなる
平成22年3月下旬仕事に復帰する
平成23年2月頃ノリトレンの減薬を開始
平成23年7月頃ノリトレンがなくなり治療終了
令和3年1月現在今の所、再発なし
今、うつ病で闘病されている方、それを見守る方に伝えたいことがあります。
自分はうつ病が一生治らないと思う時もありました。今思うと、それもうつ病のひとつの症状であったと思います。
すべての病気が治るとは言えませんが、うつ病になって、時にはもう治らないと悲観的になって、でも治った人がいる、というその事実を知って欲しいと思います。